「三年鳴かず飛ばず」プロジェクト長屋賃貸棟
撮影:砺波 周平
環境問題に関するニュースでは、「脱炭素」や「カーボンニュートラル」といった言葉をよく耳にします。CO₂の排出量を減らすことは、たしかに重要な課題です。
ただ、環境問題は地球温暖化だけではありません。森林の減少、生き物のすみかの消失、土壌や水の汚染。私たちの暮らしを支える自然環境にも、さまざまな課題があります。
そこで近年注目されているのが、「ネイチャーポジティブ」という考え方です。今回は、この考え方とタイルづくりがどこでつながるのかを考えていきます。
ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を止め、自然を回復の方向へ転じさせることを指します。2022年の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」で2030年までのミッションとして掲げられ、日本でも2023年に策定された「生物多様性国家戦略2023-2030」のもとで、その実現が目指されています。
脱炭素が温室効果ガスの排出削減に焦点を当てるのに対し、ネイチャーポジティブは自然環境そのものの回復に目を向けた考え方です。どちらか一方ではなく、両方を同時に進めていくことが求められています。
環境省は、ネイチャーポジティブの実現には「いわゆる従来の自然保護だけでなく、気候変動対策や資源循環等の様々な分野と連携していくことが必要」としています。自然を守ることと資源を循環させることは、一見すると別の話に思えますが、つながっています。
ネイチャーポジティブと各分野のつながり(イメージ)
新しい製品をつくるために天然資源を採取する場合、採掘の方法や場所によっては、森林や地形、そこに暮らす生き物に影響を与えることがあります。廃棄されていた素材を原料として使えれば、その分だけ新たに採取する量を減らせます。資源循環が、自然環境の保全にもつながるということです。
タイルも器も、焼き物の原料は粘土です。そしてその粘土は、山から採掘されます。良質な粘土が採れる土地であることから、岐阜県の東濃地方、とくに多治見市や土岐市は、美濃焼とタイルの一大産地として知られてきました。
その多治見市内にあった粘土鉱山は、1993年に59か所。それが2023年には、2か所になりました。閉山の理由はさまざまですが、産地でありながら原料が手に入りにくくなるという状況が生まれています。
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粘土鉱山の全景
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タイルの原料となる粘土
この原料枯渇に向き合うことが、ecorevoの役割です。新たに採掘した原料(バージン原料)だけに頼るのではなく、これまで廃棄されていた素材を原料にして、意匠性のあるタイルをつくれないか。産地が、これからも焼き物をつくり続けられるようにするための取り組みです。
結果として、この選択は自然環境への負荷を抑えることにもつながっています。バージン原料の使用量を減らせれば、その分だけ採掘による影響も小さくできるためです。
リサイクルタイル「暁(あかつき)」は、都市ごみの溶融スラグを原料としたタイルで、リサイクル率は最大100%です。この数字は、原料全体に占めるリサイクル原料の割合を示しています。100%であれば、バージン原料を一切使っていないということです。
粘土は、今後も焼き物づくりに欠かせない資源です。だからこそ、廃棄物で補える部分は補い、限りある粘土を大切に使っていく。ネイチャーポジティブという視点から見ると、リサイクル率という数字には、そうした意味も含まれています。
環境省は、ネイチャーポジティブの実現にあたって、企業に対し、製品やサービスを通じて生物多様性に資する選択肢を消費者に提供することを求めています。
私たちにできるのは、建材の選択肢を増やすことです。そしてその先で、どれを選ぶかを決めるのは設計者の方々です。
CO₂を減らすこと。廃棄物を減らすこと。そして、限りある資源を長く使い続けること。別々の課題のように見えて、どれもつながっています。私たちはこれからも、資源循環を軸に、自然環境との調和を意識したものづくりに取り組んでいきます。
再生原料から生まれる色幅や表情は、画面越しには伝わりにくい部分があります。一枚ごとの違いが、張り上がったときの奥行きをつくります。
サンプルをご用意しておりますので、よろしければお手元でご覧ください。仕様のご相談や施工方法についてなど、ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。