
「環境配慮のプロジェクトだけど、ありきたりな質感のタイルしか見つからない……」 そんなデザインの制約にお困りではありませんか?
サステナブルな空間設計において、意匠性と環境配慮のどちらかを諦める必要はありません。なぜなら、同じ「焼きもの」であっても、空間の空気感をガラリと変える方法があるからです。その秘密は、タイルの表面を決定づける「釉薬(ゆうやく)」に隠されています。
今回は「釉薬にはどのような種類があり、空間にどう影響するのか?」をテーマに、表現の引き出しを広げるタイルの基礎知識を深掘りします。
釉薬とは、タイルの表面に施し、高温で焼成することで「ガラス質」に変化する材料のこと。単なる「色付けの塗料」ではなく、タイルの美しさと防水性・清掃性といった機能性を両立させ、焼きもののアイデンティティを決定づける重要な素材です。
・マット釉: 光沢を抑えた落ち着いた質感。光を柔らかく拡散し、木や石などの自然素材と美しく馴染みます。
・半マット / 半光沢釉: 両者の中間的な質感。程よい上品な反射を持つ、バランスの取れた仕上がりです。
・ブライト釉: ガラス質の艶感を強調した釉薬。発色が鮮やかで高級感があり、空間を明るく演出します。
・窯変釉(ようへんゆう): 窯の中の炎の揺らぎや温度変化によって、一枚ごとに偶発的な色合いやグラデーションが見られます。
・結晶釉(けっしょうゆう):釉薬の内部で結晶を成長させ、花模様や鉱物的な表情が見られます。
・貫入釉(かんにゅうゆう): 土と釉薬の熱膨張差を計算し、あえて表面に細かなヒビ模様をデザインとして表現することが可能です。
ベースとなる長石系や伝統的な灰釉をはじめ、鉄分を活かした渋い「鉄釉」、窯の中の酸素量(酸化・還元)で「緑」にも「赤」にも変化するドラマチックな「銅釉」など、含まれる金属成分によって色彩は無限に変化します。
釉薬のメカニズムとエコレボの技術が掛け合わさることで、デザインの制約を排した個性豊かなプロダクトが生まれています。
前回もご紹介した「モルテノヴァ」は、マット・ブライト・窯変・結晶の4つの釉薬表現をベースにした、全55色9形状におよぶ多彩なパレットが魅力です。再生原料(スラグ)を配合した釉薬が、1枚ごとに豊かな「揺らぎ」を生み出し、意匠を妥協しない空間設計を可能にします。
「貫入釉」の魅力を美しく表現し、エコレボを象徴するもう一つのプロダクトが「ウール」です。
タイル素地だけでなく、表面を彩る「釉薬」にもグラスウール(リサイクル原料)を配合しています。本来捨てられるはずの資源を美しいガラス質へと生まれ変わらせる技術が、この1枚に凝縮されています。
施釉タイプに見られる色彩と、ガラス系廃材だからこそ生まれる繊細な貫入は、空間に上質な空気感をもたらします。
タイルの表情を決定づける「釉薬」は、単なるコーティングではなく焼きものの個性そのものです。マットな質感からデザイン性に富んだ貫入まで、釉薬の知識を少し深めるだけで、光のまわり方や空間の空気感をコントロールする引き出しは大きく広がります。
これからの建築において、再生原料を活かしたサステナブル建材を選ぶことは、環境配慮だけでなく、空間に「新しい美学」をもたらす価値基準となります。
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